2023年5月30日

『子どものことを子どもにきく』読了。

作者は子どもに関わる仕事をしてるだけあって、我が子の言動についての分析も鋭いところがある。とくに迷子体験の振り返りは素晴らしい。普通は迷子になった子が見つかってホッとしたで終わってしまうものだが、こうして根掘り葉掘り聞き出すことで、子どもへの理解が深まっていく。

 それにしても(早く泣かないかなあ。泣けば迷子センターに連れてきてもらえるんだから)と考えて合理的だが何もしなかった親よりも、涙をこらえて自分一人の知力と体力でことを解決しようとした子どもの方がずっとストレートでかっこいい。

子どもの成長を、こういう視点で振り返れる親でありたいものだ。

あとがきがまた振るってる。

子どもーー隆くんのその後について語られているのだ。

中学生の隆くんは冒険心にあふれた少年に成長していた。

彼はある日、大津(滋賀)の友だちのところにいくと言い残し自宅から消え失せた。愛車の自転車とともに。隆くんの自宅はなんと狭山(埼玉)だ。携帯も何もない時代、コンビニでトイレや食事や地図をまかないつつ、公園のベンチで寝みながら、ひた走ること1週間。無事大津へ到着。毎日連絡する(公衆電話かな?)というところが、一応の配慮を感じさせる。

 

そんな隆くん、中三になる直前、今度は日本を旅して回りたいと直言する。

夫婦で相談し(高校生になるまで)一年待てとストップをかける作者。

しかし三年生になった連休直前の朝、書き置きを残し出ていってしまうのだ。

隆は武者修行に出たがっているのだ。

叱るでも連れ戻すでもなく、そこまでの覚悟でやるなら仕方ないとあれこれサポートをしてやる作者。親としての態度に感銘を受けた。

実は家の息子も自転車で出かけるのが大好き。一日軽く往復100キロの道のりを行くことがある。別に親が車で連れてってやってもいいし、時には連れてってくれと頼まれることもある。できるだけリクエストに応えてやってもいる。

でも彼は、自分の足で、自分の行きたいところに、自分のペースで行きたいのだ。

親としては心配だ。交通量も多いところで事故に遭うかもわからない。そんな遠くまで行くんじゃないよと何度となく声かけしている。それでも親の心配は振り切って出ていく。「そんな遠くまで」という親の物差しは、彼が持ってるそれとは違うスケールのものなのかもしれない。

作者は、

迷子体験は、やがてくる親離れ子離れのウォーミングアップというか小手調べのようなもの

だという。

ならば、自分の力で遠くへ行きたいという彼らの行動は、差し詰め親離れ子離れの実践トレーニングのようなものなのかもしれない。